魚の標本と聞くと多くの人がイメージするのが骨だけになった骨格標本や最近話題になり、水族館などで見ることができる透明骨格標本かと思います。
これらの標本はそれぞれ非常に優れた点があるのですが、どちらも魚の生きていた状態の色を確かめることができません。
また触って確かめることも基本的には出来ません。
そこで今回僕が独自に作った色付き触れるグリセリン標本の作り方を紹介しようと思います。
この記事はこんな人におすすめ↓
- 魚の標本を作ってみたい人
- 自由研究等で魚を使いたい人
- 単純に標本に興味がある人
筆者のプロフィール:テトラ
目次
グリセリン標本とは

僕の言うグリセリン標本とは魚の体内の水分をグリセリンに置換し、空気中で保存可能な魚の標本のことを指します。
通常、グリセリンで魚の体内の水分を全て置換する場合、保存にはグリセリンに漬けておく色彩保存標本というものがあるのですが、その場合直接触って確かめることができません。
反面、僕の作るグリセリン標本は色彩保存標本の利点である色をそのまま 残すという課題をクリアしながら、空気中で直接手に取って観察することができます。
もちろんこのグリセリン標本が学術的に標本であると断言はできませんが、自宅で簡単に作成することができ、普段ない経験をすることができるのでぜひ挑戦してみてはいかがでしょうか。
以前作ったグリセリン標本
さて、実は以前にもグリセリン標本を作製し、記事にしております。
ここからは以前の内容を踏まえた上で話すので、まだ読んでない方はこちらからどうぞ。
作り方だけ教えろという方は読み飛ばしていただいて結構です。
以前はカジカとアユという魚で作りました。
カジカは中々馴染みのない魚かと思います。
実際スーパーで売っているところもほとんど見たことがありません。
アユに関してはなじみ深い魚かと思います。
実はこの時に作成したグリセリン標本なのですが、1年保存することができず破損してしまいました。
以前に作ったグリセリン標本について簡単に説明します。
以前は魚を皮と骨だけにすることでグリセリンで置換する面積を少なくしました。
また、空洞となってしまった中身は綿を詰め、腹部を糸で縫うことで補っていました。
しかし、皮を身から剥がし、グリセリンで水分を置換することで皮の強度が極端に低下し、度重なる衝撃に耐えることができませんでした。
衝撃と言うのは実際に展示し、お客様に触っていただくことで大人や子供が体験してくださいました。
その結果、関節部などのもろい部分はもげてしまい、皮の薄いところからどんどん破れていきました。
そのまま保存する分には1年は余裕で保存可能なのですが、触る、衝撃を与えるという観点から見ると課題が多く残りました。
身を残したグリセリン標本
さて、この強度という問題点を踏まえ、皮と骨だけにするという所から離れることで解決しました。
除去する部分を内蔵だけに抑え、身は丸々残しました。
相することで単純な保存に影響が出る可能性はあるのですが、触って確かめるという観点から見た強度はかなり強化されるはずです。
さて、この新しいグリセリン標本が実際どうなったのかは最後に紹介しようと思います。
グリセリン標本に必要なもの
それではグリセリン標本を家庭で作るために必要となる物を紹介していきます。
- 標本にする魚
- グリセリン液
- 包丁
- 乾燥させる場所
これだけです!
前回より減りました!
グリセリン標本に必要なもの:標本にする魚
標本にする魚です。
なるべく作業がしやすい小さい魚が良いです。
今回は身を残す方法であるため、前回のようにグリセリン液の浸し方に融通が利きません。
また身の中の水分をグリセリンに置換する必要があるため、身の体積は少ない方が簡単です。
具体的にはシシャモやワカサギ、豆アジなどがベストでしょう。
あまり大きな声で言えないのですが、僕が作成したグリセリン標本に使った魚の名前を忘れてしまいました…
多分シシャモかワカサギです…
グリセリン標本に必要なもの:グリセリン液
魚の中の水分をグリセリンに置換するためのグリセリン液です。
特に取り扱うための資格はなくアマゾンで普通に購入することができます。
今回は扱う魚が小さい前提であるため500mlで十分と思います。
一応僕が購入したガチ勢向けも貼っておきます。
グリセリン標本に必要なもの:包丁
魚の内臓を取り除くための包丁です。
一般的な万能包丁で十分ですが魚が小さいとフルーツナイフの方がやりやすいです。
フルーツナイフは普通に百円ショップで購入することができます。
グリセリン標本に必要なもの:乾燥させる場所
グリセリン液に漬け終わった魚からはしばらくグリセリン液が出てきます。
そのため汚れないように下にキッチンペーパーを敷くなどをした場所が必要です。
グリセリン標本の作り方
それではグリセリン標本の作り方を簡単に説明していきます。
グリセリン標本の作り方:内臓を取り除く
まずは普通に魚をさばく要領で内臓を除去していきます。
なるべく魚の身体を傷つけないようにお腹を割き、内臓を除去、洗浄していきます。
この時、エラまで取れるとベストです。
しかしエラを除去する時は魚の身体が欠損しやすいので注意が必要です。


グリセリン標本の作り方:グリセリンに漬ける
次にさばいた魚をグリセリン液に漬けていきます。
この工程の目的は魚の体内の水分をグリセリン液に置換することですので数回に分けて置換していく必要があります。
小さめの容器を用意して魚の全身が漬かるくらいグリセリン液を入れていきます。
一度に漬けておく期間は一日から二日、三回ほど行います。
漬けているときの魚の形が標本にした時の基本的な形になりますので、くれぐれもこのように曲がった状態で漬けないでください。


グリセリン標本の作り方:洗浄する
グリセリン液で置換した魚は触ると手にグリセリンが付いてべたべたしてしまいます。
そのためグリセリン液に漬けた後の魚を流水で洗う必要があります。
触ってもあまり手にグリセリンが付かなくなるくらいまでしっかりと洗浄して下さい。
この作業を怠るといつまでたってもグリセリン液が付着したままになってしまいます。
そのためしっかり洗浄する必要があります。

今回の標本の保存期間や強度
今回の標本は作製してから1年が経過しました。
保存条件は常温、通常の湿度、直射日光の当たらない場所です。
いわゆるリビングの一角にそのまま置いておきました。
状態の悪化は一切なく、当時作成した時のままでした。
強度に関しては大方問題なく、多少動かしても壊れる様子はありませんでした。
しかしやはり関節部分が弱く、無理に動かすと壊れそうではありました。
今回解決できたのは皮における強度の部分、逆に改善できなかったところは関節部の強度でした。
また内蔵を抜いているのでやはり腹の部分は生きている状態とは変わってしまいます。
何か完全点やアドバイス等ありましたらお気軽にコメントしてくださると嬉しいです。
標本の定義の話
このような記事を書くときには必ず書いているのですが、僕の作るグリセリン標本は学術的に標本と言えないかもしれません。
というのも僕の作る標本が標本の定義に完全に当てはまっているとは言えないからです。
この方の説明がとても分かりやすいので参考として紹介しておきます。
ここでも説明している通り僕の標本は標本というより剥製に近いです。
その点は考慮したうえで作ってみてください。
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